マランツの象徴
長いオーディオの歴史の中には、リスニングのあり方を変え、新しいアイデアとパフォーマンスの基準をもたらし、これまでにない新しいオーディオ体験を生み出した記念碑的な技術や製品が数多く存在します。
Hi-Fi を愛してやまない人たちにとっては、マランツのAudio Consoletteこそが、そのリストのトップに位置する、真の業界の革新者です。
Audio Consoletteの物語は、ソウル・マランツを悩ませた、1950年代初頭の78回転のSPレコードが抱えていた不統一の問題から始まります。それは、アメリカレコード協会(RIAA)の設立と協会によるイコライゼーション規格制定以前のことです。
1890年頃に登場して以来、78回転レコードには、それを制作するレコード会社が個別に定めるイコライジング・カーブが使われていました。統一規格がなかったことで、ユーザーが正確なサウンドを再生することは困難で、一貫性のないリスニング体験が生まれることとなりました。
自分のレコードコレクションを満足できる音質で再生できなかったソウル・マランツは、自らそれを修正することを決意しました。目指したものは、どんなパワーアンプにも接続できて、アーティストが意図したものに限りなく近いクリーンなサウンドを生み出すことができるプリアンプを作成することでした。
ニューヨーク市のキューガーデン地区の自宅で作業を開始したソウルは、いくつかの設計を試してみました。そして1951年、イコライジング・カーブを切り替えることによって様々なレコードを正確に再生することができるプリアンプAudio Consoletteを完成させました。当初100台のみが生産されましたが、噂を聞きつけた愛好家たちから400台を超える注文が殺到。その生産のためにソウルと妻のジーンは、1953年にニューヨーク州ロング・アイランドに工場を借り、マランツ・カンパニ―を設立したのでした。そしてその翌1954年には、Audio Consoletteは、新たに制定されたRIAAイコライザー規格にも対応したModel 1としてリニューアルされました。また同年にはシドニー・スミスがマランツ・カンパニ―に入社。第二次世界大戦中にラジオ技術者として電子工学を学んだ音楽愛好家であり技術者でもあったシドニーは、チーフエンジニアとしてマランツのためにいくつもの製品を設計し、彼自身も、音響再生におけるレジェンドになりました。
1954年に新しいRIAAイコライザー規格ができた後も、Audio Consoletteとその後継機種は、そのオーディオ的な魅力と音楽性豊かなサウンドによって、オーディオファイルたちから高い評価を受け続けました。
Audio Consoletteは真空管式のモノラル・プリアンプでした。その名前が示すように、オーディオ信号がパワーアンプやスピーカーに送られる前に、最初に送り込まれる装置です。アナログプレーヤーからの信号をイコライジング処理することに加え、ラインレベルソースの切り替えを行い、信号を増幅します。このユニットは、合計3本の12AX7真空管を搭載していました。現在の高度に進化したエレクトロニクスの時代でも、真空管アンプによる温かなサウンドを好むオーディオ愛好家はいます。
Audio Consoletteは、電気的にはそれほど複雑な製品ではありませんでしたが、市販用製品にはめったに使われない高品質のパーツを数多く採用していました。1954年の広告には次のように書かれていました。「使用されている18個の抵抗器は低ノイズカーボンタイプです」。”
プリアンプに使用されていたコンデンサーは、愛情を込めて「バンブルビー」や「ブラックビューティー」と呼ばれていました。コンデンサーマウントに吊り下げられたベークライト板などのディテールが、音質に大きな違いをもたらしました。Audio Consoletteには、7系統のセレクタースイッチ、低域/高域独立型のフォノイコライザー、低域/高域トーンコントロール、ラウドネスコンペンセーター、高域カットオフフィルターなどの機能が搭載されていました。
キャビネットの両サイドには、上部を覆う金色のパンチンググリルを支える2枚の木製サイドパネルがあしらわれ、背面は真鍮製の木ネジで固定されていました。Model 1とAudio Consoletteが混同されることもしばしばありますが、Model 1の方がマランツの伝統的なキャビネットに収められていることが多いので、すぐに違いを見分けることができるはずです。
It’s Audio Consoletteがリスニング体験を革新して以来、ほぼ70年の時間が流れました。今なおオーディオファイルやHi-Fiコレクターが探し求めているこのプリアンプは、多くの人々から愛されている分、めぐり合うのも困難です。さまざまな推定がありますが、オリジナルのAudio Consoletteは100台ほどしか現存していないという説もあるようです。
この希少なオーディオ史に残る貴重な作品に投資することにためらいを感じる人に朗報があります。マランツの新しいアンプは、妥協を許さないディテールへのこだわりという伝統を変わらずに受け継いでいます。
たとえば、Audio Consoletteが多くのプレミアムパーツを採用していたように、MODEL 30には、独自のディスクリート回路であるハイパーダイナミックアンプモジュール(HDAM)が使われています。MODEL 30は、市販のソリューションを使わず、何百個もの個別のパーツを組み合わせたカスタム設計を採用することにより、標準的なICチップを用いた製品を遥かにしのぐ高い性能を発揮し、マランツに期待されている音楽性を生み出します。懐かしい78回転レコードの音も瑞々しいサウンドによみがえらせます。
MODEL 30をご覧になり、その比類のないパフォーマンスについてご確認ください。 here.