マランツの象徴
これは、卓越性の絶え間ない探求が破滅への道になりかけた経緯と、Hi-Fi構築の革新的でグローバルなアプローチを通じて、マランツがクオリティとアクセシビリティのバランスをとるという考え方をどのように確立していったかについての短い物語です。
これまでに製作された最高のチューナーとしてしばしばその名が挙げられる画期的なマランツModel 10Bには1つ大きな問題がありました。非常に高い基準に基づく設計でありながら、販売価格を抑えたことで、売れ行きは好調だが、財政的には苦しむことになりました。実際問題として、Model 10Bのために会社の資金は枯渇し、創業者のソウル・マランツはスタッフへの給料の支払いにも窮しました。確かに、ソウル・マランツの完璧主義が、ビジネスを崩壊寸前にまで追いやった原因だったのかもしれません。1964年、ソウルは新しい提携企業であるスーパースコープ社を事業に加え、事業改革を手助けしてもらいました。スーパースコープ社は、単なる製品の流通会社から、マランツの将来を見据えたメーカーへと成長しました。
1966年、スーパースコープ社は、きわめて高品質で手頃な価格のマランツ製品を生産するため、いくつかの日本メーカーと製造の可能性について検討を開始しました。その頃、ソウル・マランツは、可能な範囲で最も音楽的なサウンドを作りたいという確たる願望のもと、ワールドクラスのエンジニアリングチームを創設しました。マランツにとって、ソウルの知識と情熱を次世代のサウンドマスターたちに伝えることは非常に重要であり、そうすることで、今日まで続く伝統と精神を作り上げることができたのです。
Model 18は、プリアンプ、パワーアンプ、チューナーをまとめて1つの筐体に収めたレシーバーの初期の例であり、ソウル・マランツが信頼できる新チームに権限を委譲したことで、彼のエンジニアリング知識の恩恵を直接受けた最後の製品となりました。
そのModel 18を改良したModel 19が、スーパースコープ社と共同で開発した最初の製品です。設計はスーパースコープ社が担当し、改良された技術コンポーネントとアップグレードされた美を備えた製品です。初期の頃にカリフォルニアで生産しましたが、その後ほとんどのModel 19レシーバーが、アメリカ製のコンポーネントを使用して日本で製造されました。最高級のFMステレオチューナーと、最も洗練されたステレオプリアンプ、それに高性能パワーアンプを組み合わせ、そのすべてを1つの総合マシンに仕立て上げたModel 19は、オーディオの卓越性を代表する製品となりました。
Model 19は、100ワット(チャンネルあたり50ワット)の連続出力を、8Ωのスピーカーに20Hz~20kHzの周波数レンジで供給し、全高調波ひずみおよび相互変調歪みは、±0.25dBの周波数応答で0.15Z%未満です。簡単に言えば、信じられないほどの高忠実度と有名なマランツの温かさのあるサウンドを大音量で再生することができます。組み込み式のオシロスコープはビジュアルインジケーターであり、電波が非常に弱い場合でも完璧に受信できる優れたチューニング機能を発揮します。専用のジャイロタッチチューニングホイールは摩擦と摩耗を抑え、最適なチューニング精度を保証します。
すべてのマランツ製品と同様、Model 19は高い耐久性を誇ります。Variable Overlap Driveは、コンポーネントの自然な経年変化を自動的に補正し、リスナーは常に、オープニングの夜のパフォーマンスのようなサウンドを体感することができます。こうしたエキサイティングな機能のすべてを、黒い文字が刻み込まれ、陽極酸化処理された美しいフロントパネルの背後に配置し、手で磨き上げられたおしゃれなウォルナットキャビネットに収めれば、真に精緻なレシーバーを完璧な形で楽しむことができます。
Model 19のサウンドは、Model 18とは一線を画します。しばしば、真空管の音に近く、存在感が際立っていると表されます。トップエンドはややソフトで、ミッドエンドとローエンドは力強いフルサウンドです。年と共に、このオーディオ機器のサウンドは少しざらつきを帯びてくるかもしれませんが、それも良い効果をもたらします。その原因はおそらくゲルマニウムトランジスタだと思われます。いずれにせよ、Model 19は当時の音楽的サウンドをはるかに超えたサウンドを生み出し、以来美しく熟成してきました。
現在、最新のマランツ製品にも、同等の細部へのこだわりや、革新性、エンジニアリングの卓越性を見ることができます。